茅ヶ崎市の落ち着いた住宅地に建つ、美術家とその家族のためのアトリエ併設住宅。敷地は旗竿地と呼ばれる路地状敷地で、竿にあたる通路部分は南に15mもの長さがある。また旗にあたる部分は、四面とも隣家の壁が近く建て込んでいる。
そこで敷地のうち15mの通路部分を街に接続する路地のような庭とし、それがそのまま室内に引き込まれ建物を形作るような建築をめざした。
1階はこの路地庭から連続する玄関にはじまり美術書の並ぶ書庫、つきあたりを東に折れて水回り、そして北東の小さな庭に抜ける。
2階リビングの屋根は対角線上に端から端まで切り込みを入れ、南西の角の一点のみを2.5m持ち上げている。結果として生まれたくさび形のスリットが、常にやわらかな光を室内にもたらし空を印象的に切り取る。
このくさび形のスリットは構造的にも有効利用されており、平面形状5.5m×6mの無柱空間が実現している。スリットの上下弦材には梁断面のせいをおさえるためH型鋼を用い、水平力に対する屋根の面内剛性の確保はスリットの三角形状をトラスとして対処している。
リビングに光を導くために持ち上げた南西のコーナーは、外観上も大きな役割を果たしている。このコーナーは立面的にも平面的にも鋭角であり厚みを感じさせない。旗竿地の常として道路から奥まりごくわずかしか外観をあらわさないものの、印象的な佇まいを生み出している。
敷地面積114.61m2 建築面積 52.91m2 延床面積 90.33m2 木造2階建て 所在 神奈川県茅ヶ崎市 施工 大同工業 構造 多田脩二構造設計事務所 設計 都留理子 松田隆志
撮影 淺川敏
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