茅ヶ崎市の落ち着いた住宅地に建つ住宅。旗竿地と呼ばれる路地状敷地である。 15mの長さがある通路部分を路地のような庭とし、路地がそのまま建物内へと引き込まれ、さらに1階から2階へと導かれるように住空間が展開していく構成となっている。
外壁は焼杉。炭化させた後に炭をブラシで落とした「美杉」という材。落ち着きがありつつ、一般的な焼杉ほど重々しさがないところがこの住宅地での佇まいにふさわしいと考えた。
2階LDK。2枚の三角形の屋根のスキマから差し込む光が、天井に、壁に、光のデザインを生み出す。 四方の隣家が建て込んでいて抜けが少ない環境のため、良好な光を確保できる屋根形状を検討。天井の対角線に沿って楔形に開口をデザインした。昼は青空が鋭角に切り取られる。 照明は、三角形の底辺に沿ってシームレスなラインランプを設置。滑らかな光がグラデーションを描く。
壁に現れる光のデザインの邪魔をしないよう、スイッチはキッチンカウンターのサイドに。この丸い小さなスイッチは、こういったところでよく使われる。
フローリングとキッチンの面材はオーク。キッチンカウンターは人工大理石。キッチン背面収納の扉を開けると左から、洗面スペース、洗濯機置き場。一番右にはデスクスペースが収納されている。
光を受け止めてリビングに導くために持ち上げた南西のコーナーは、外観上も大きな役割を果たしている。 立面的にも平面的にも鋭角のために、厚みを感じさせないちょっと不思議な見え方となる。 旗竿地の場合、わずかしか外観をあらわさない建ち方とならざるを得ないが、この厚みを感じさせない鋭角の壁が存在感を放つ建物となっている。
大きな空間にリビングとアトリエを配することは、建主の要望からすぐに決定した。それ以外の水回りや子供部屋や収納配置については、考えうる配置パターンをシミュレーションしていった。
子供部屋は、リビングのコーナーをL字に寄り添うように配置。引戸は壁に収納されるので、開けている時は適度な連続性と距離感を生み出す。 1階奥は、画家であるご主人のアトリエ。
絵を描く上で必要な壁の大きさを確保するために、床を1段下げている。
階段下は収納としている。収納するものに対して奥行きが深いこともあり、収納扉の内側を飾り棚としている。