鉄骨造3階建て。1階は光を薄く反射する高耐食性メッキパネル仕上げとしている。そのために3層分の高さが分節され、ボリュームによる圧迫感が和らいでいる。
パネルの左1枚は、エキスパンドメタルで製作した門扉となっている。門扉を開くと思いのほか高さのあるジューンベリーの木が出迎える。建物の内部に足を踏み入れたつもりがアプローチを兼ねた中庭となっていて、緩やかにプライベート空間へと導かれる。
中庭から2階のキッチンとリビングを見上げる。壁に設置されたブラケットライトは、美術館の照明にもよく使われるERCO社のもの。遠くまで滑らかに光が広がる。
中庭からエントランスへ。エントランスの幅は1250ミリ。それに対して奥の階段は900ミリ。350ミリだけ浴室前の中庭が顔をのぞかせる。
中庭とガラスパネルで一体となった浴室は、視線を気にすることなく、毎日の入浴で露天のような開放感を味わえる。洗面台はT-form(幅1000ミリ)。鏡裏は収納になっており、一枚の鏡のまま開くようになっている。
2階のLDK。目を引くステンレスのカウンターは長さ5m。キッチンカウンターが、そのまままっすぐに伸びてダイニングテーブルになっている。段差のないステンレス1枚仕上げなので、料理から食事までをシームレスにつないで、つくる人と食べる人を分けない。シンプルな造形のベンチは、来客にフレキシブルに対応する。
LDK空間は中庭をL字に囲み、外と内が溶けあっている。ジューンベリーを見下ろすのが楽しい。降り注ぐ光や青空、緑、季節の移ろいを感じながら生活する空間となっている。
スチールプレート6ミリで製作した階段は、常温亜鉛メッキ塗装で仕上げた。この無骨なニュアンスは、1階中庭のコンクリート床のニュアンスを引き継いで上階へと導いている。
3階へと至る最後の6段のみは木の階段。プライベートな個室に向かう気分へと切り替えるきっかけともなっている。