Works

世田谷S

Housing
Update: 2024.5.7

世田谷の住宅地、だらかに起伏の続く住宅地の一角に建つ住宅である。 間口奥行きともに8.5mほどの敷地には、対角方向に1.4mの高低差があった。

クライアント夫婦は、ゲストが気兼ねなく時間を過ごせるカフェのようなLDKとテラス、そしてリラックスできる開放的な浴室を望んだ。

私たちは許容建築面積の最大である一辺6.58mの正方形プランを設定し、北側からかかる高度斜線に沿うように屋根をかけた。地面に半ば埋まる地階を収納とエントランス動線と子ども部屋、1階を一辺6.58mのLDKとテラスとし、その上部に浮かぶ小屋のような2階を寝室、テラスの一部を浴室とした。

正方形の平面は奥行きがどちらも同じとなり方向性が生じづらく、長方形平面と比較して求心的な性質をもつ。
この性質にも助けられ、世田谷SのテラスとLDKはより一体感を感じられる関係となった。

ステンレスヘアライン仕上げのキッチンカウンターは、ダイニングテーブルと一体であり、長さは4.5m。

1階リビングルームの南、階段上部のトップライトはスケルトンな階段を介し地下まで光を導き、一方北のテラスは空へ開放されている。南北どちらも上部に抜けていることから、天井面はリビングルームに軒下空間がもつ半屋外的な雰囲気を創出する。

2階の寝室は壁天井ともにバーチ合板仕上げ。棟を中心に左右対称の家型であるこの寝室は、トップライトに開かれた階段を経て到達することも相まって、もうひとつの「家」のように感じられる。外と切り離された、開放的な下階のリビングとは対照的な部屋である。

2階浴室と水回りの天井はH型鋼の梁や屋根下地のキーストンプレートが表しとなっており、トップライトとも相まって露天風呂のような開放感を得られる。

地下1階は、玄関、収納部屋と子供部屋である。
厳しい高度斜線をクリアしながら望む天井高を確保するため、玄関を入ると一段下りて室内へと入る形式とした。

将来用に用意した子供部屋は、フレキシブルに対応できるようコードの長いペンダントライトを2つ用意した。フックの位置を変えることで、照明の位置を調整可能である。

敷地面積や高度斜線による高さ制限など都内の住宅地としてリアリティある条件のもと、過剰も不足もなく、外部空間と住空間とが融合することで根源的な快適性が生み出される。

そのような住宅をめざした。


  1. 竣工:2008年
  2. 用途:住宅
  3. 構造:鉄骨造
  4. 敷地面積:72.65㎡
  5. 延べ床面積:98.81㎡
  6. 構造設計:多田脩二
  7. 施工:スリーエフ
  8. 設計:都留理子 小野寺博一
  9. 写真:淺川敏