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世田谷D

Housing
Update: 2024.7.18

世田谷区の住宅地に建つ3人ご家族のための住宅。ミニ開発で区画された敷地は間口6m×奥行き15m。南北に細長いために隣地との距離を確保しにくい状況の中、どのように良好な居住環境を実現させるかがテーマだった。北面側の敷地奥の住空間にまで光が行き届き、家全体を心地よい環境とするには?

 

スタディ模型での検討を経てたどり着いた答え。それは、細長い敷地に沿って4つの棟をずらしながら並べるというプランだった。

 

南から北に向かって2階建てと3階建てのボリュームの4棟をずらしながら配置すると、小さな庭としての”空き”が生まれる。さらに、建物のずれた壁を空きに面した開口部とする。その結果、プライバシーを守りながら、建物の奥まで外部に開かれた住空間が生まれる。



 

高度斜線により、東側隣地境界付近は高さが抑えられる。そのために東側にずれたボリュームは2階建てもしくは低い3階建て、西側にずれたボリュームは高い3階建てとした。



 

アプローチを抜けて玄関に入り、階段を上がると2階LDK。リビングは道路に面しているためプライバシーに配慮して、南側に開口をもたないシンプルなボリューム。しかし、ダイニングルームのあるボリュームとは平面的にも高さ的にもずれているので、ハイサイドライトからたっぷりの光が入る。高さのずれは、リビングとダイニングの床に40センチほどの高低差を生み、腰掛けるのにちょうどいい。

 

2階は4棟にまたがっており、南面道路側からリビング→ダイニング→キッチン→浴室等水回りとなっている。1つの家の中にいながら4つの建物を行き来するように生活することが楽しい。

 

ダイニングから階段を上がって3階へ。門型ボリュームがつくるL字型の隙間が青空を切り取る。

 

低い2階建てボリュームの上部は、手前と奥の建物に囲まれた屋上テラスとしている。

 

南北方向に視線を向けてその先にあるボリュームを見るとき、いつも住空間と一緒に空や近隣風景が視界に入るのが面白く、気持ちいい。また、4つの建物を横断して住んでいるかのような感覚は、生活にリズムの変化と格別な開放感をもたらす。

 

ご夫婦ともにお忙しいため、家事動線を機能的にすることで時間の効率化をめざした。キッチンに隣接した水回りは、洗面脱衣室と浴室、物干しスペースがコンパクトに収まっている。物干しスペースは敷地の一番南に位置し、外から洗濯物が見えないように、しかし、風は通すように目の細かいエキスパンドメタルをスクリーンとした。

 

短冊状の敷地であるが、4つの棟がずれて並ぶことで敷地の中に小さな中庭をつくりながら、空や近隣の風景への開放性と包容感をあわせもつ住宅となっている。

 


  1. 竣工:2007年9月
  2. 用途:住宅
  3. 構造:鉄骨造
  4. 敷地面積:98.2㎡
  5. 延べ床面積:127.54㎡
  6. 構造設計:多田脩二構造設計事務所
  7. 施工:飯塚工務店
  8. 設計:都留理子 北川春樹
  9. 写真:中川敦玲