多摩川から続く平地に張り出した尾根の先端に建つ事務所併設住宅である。
周辺は大きな木々が勢いよく生い茂り、北西の方角に視界がひらける。敷地は不整形な四角形をしており、北東の角に高さ10mを超える大きな樫の木がはじめからあった。
周辺の木々や敷地内の樫の枝をどのように建物に取り込むかは、重要な課題であった。壁に普通に窓を開けると、風景は一本の線でくっきりと切り取られる。
だがこの敷地周辺の迫力ある緑には、どこまでも拡散するような、室内に大胆に介入してくるかのような取り入れ方が合っていると感じた。そこで緑を取り込む開口部には全て奥行きをもたせ、その奥行き部分に緑や光を反射する程度にツヤのある塗料を塗ることにした。
開口部の形状は、樫の木が枝を広げるその様子に合わせ、寄り添うような開け方をめざした。
2階エントランスのレベルは樫の枝が最大に広がる高さより少し下になるので、床から天井までの全開口とし、樫の枝振りを頭上に感じられる〈木陰のような場所〉とした。
3階リビングは、水平に力強く広がる枝と枝に縁取られて見える遠景を連続して取り込む、幅10mに渡る巨大な出窓とした。この出窓は下端を床から430mm、奥行きを480mmに設定しており、腰掛けられる高さ・構造としている。
4階レベルでは、南道路を挟んで隣に建つ2階建て家屋の屋根を飛び越えての眺望が得られるため、南面に部屋の幅いっぱいの窓を設けた。
そして3階へ降りる階段のための開口廻りを、やはり光を反射し増幅させるツヤのある塗装とし、3階へ太陽光を届けている。
このようにしてできた下作延Kは、寝室と水回りをのぞく全ての場所が、階を超えてゆるやかにつながるワンルームの家である。
そして階をまたいで感じられる樫の木や光や青空が、このワンルーム全体を室内とは思えないほどに、なにか親密な公園のような、外気を感じられる開放的な住空間としてくれている。