Works

House M

Renovation / Housing
Update: 2024.10.12

4人家族の住まいとして1981年に建てられた木造2階建て住宅。

家族構成の変化に合わせて6人が快適に暮らすことのできる住まいへとリニューアルするために、13㎡の増築を伴う全面リノベーションを行なった。

既存住宅のダイニングキッチンは小さく、また北においやられていたために、家族6人が快適に食事する場とは言い難い状況だった。

そこで、


・庭の一部に天井の高いダイニングスペースを増築する

・隣接する既存の和室をキッチン空間に改修する

という2つの改修をポイントに全体プランを構成した。そこには、家族の共有スペースを南面の庭と連続させることで居心地を向上し、一緒に過ごす時間を豊かにしたいという思いがあった。

増改築前の住宅は、戦後日本の一般的な平面構成だった。
南の庭に面する良い位置に配された8畳の和室は玄関からのアクセスもよく、 おそらく客間として、家族の第2のリビングとして、フレキシブルに使うことが意図されていたのだろう。



しかし実際には、両親の主寝室として閉じた使われ方をしていた。
そのせいでメインの生活領域は、閉じた和室を迂回するように展開することとなり、 豊かな緑を有する南の庭との関係は希薄になっていた。

そこで、最小限の増築と抜本的な改装を実施。南の庭に間口いっぱい面する、開放的な家族の共有スペースを出現させた。

また、増改築前の住宅は、1階と2階が完全に分離されていた。
2階の個室にいると、他の部屋にいる家族の気配がほとんど感じられない状況となっていた。 小さい子どもがこれから成長していく環境としては、もっと家族同士の気配がわかる住空間がのぞましい。

家族の気配が感じられるようにすることで2階の個室を孤立させず、同時に空気の流れも生み出すことで通気を向上させている。

趣味のアンティーク人形を飾りたいとの要望をいただいていた。
そこで、人形の実際の大きさをリサーチ。

見栄えが良いサイズ感を計算して棚を設計した。棚のフレームや仕切りの板材は、ローテーブルと素材感を合わせて吟味した。


壁の厚みを利用して埋め込んでいるので、まるで絵画の額縁のような見え方になっている。


玄関側とリビングの境界には、視線が通る大きなガラス框戸を設けた。

以前は壁と扉で隔てられていたために玄関から庭は隠されていたが、框戸を通してダイニング、奥の庭まで広く見通せるようになり、それは家全体の明るく開放的な気持ちよさにもつながっている。

既存の2階天井を解体すると、そこには美しい小屋組があった。


梁と斜めの火打ち材もあらわしとしながら、隠れ家のようなロフト空間とした。



一部補強するために新しい梁材も追加しているが、保護塗料の色についてサンプル作成を重ね、既存の部材と調和させている。

家族構成の変化(4人→6人)に合わせて13㎡の増築を含むリノベーションを実施。

元和室だったところにキッチンを、ダイニングキッチンだったところに父の書斎と寝室を設え、
南に面した緑豊かな庭を家族みんなで楽しめる開放的な住空間へと再生した。そのプランは、施主ご家族と新しい生活像について何度も時間をかけて語り合う中から生まれてきたものだ。


リノベーションに限らず新築でも、
住宅に限らずどんな用途の建築でも、私たちは

クライアントと対話を重ね、未来を想像する。そして、

その未来に最もふさわしい建築のあり方をともに探究し、作り上げていく。


  1. 竣工:2014年3月
  2. 用途:二世帯住宅
  3. 構造:木造(リノベーション+増築)
  4. 敷地面積:207.63㎡
  5. 延べ床面積:141.69㎡
  6. 施工:ヨシナガ工業
  7. 設計:都留理子 須田牧子
  8. 写真:淺川敏