ネクサス コールハース棟

私、都留がこれまでに感銘を受けたものについて。
まずは第一弾について書いてみます。

1991年春、福岡市の香椎浜に国内外で活躍する建築家6人による6棟の分譲集合住宅が完成しました。
磯崎新氏がコーディネートした「ネクサスワールド」です。

その販売を主目的とする内覧会が開かれており、当時九州大学の1年生だった私は先生に勧められ、同級生たちと訪れました。

当時のパンフレット。

九州大学は専門課程へと進む前に1.5年の教養課程が敷かれており、当時その教養課程のあるキャンパスは、研究室などがある本学部とは別の地にありました。
つまり建築の世界にまだつま先ほども踏み入れてなく、ほとんど知識のない1年生だったと思います。

レム・コールハース棟には、そんなときに出会います。

事前に資料などで見たときには、この建築をうまく理解することはできませんでした。

黒くゴツゴツした偽岩の外壁がうねるように、しかし接地はせず重々しい見た目にも関わらず持ち上げられています。
上部には緩やかな弧を描く断面形状の屋根が、やはりうねるようにかけられ顔を覗かせています。

コンセプトを語る当時のパンフレットの一部。

見たことのない形式に、奇をてらっている建築なのだろうか、というのが第一印象でした。

しかし実際に体験して、予想はくつがえされることになります。

薄暗いコンコースを抜けて住戸の入り口である門を入ると、全体がやわらかな光に満ち、パティオを通して3層分の内部空間がゆるやかにつながっています。3層分をまっすぐに貫く階段を上ると、最上階である3階LDKへと到達。

そこはあの特徴的なうねる屋根でやわらかに包容された、しかし開放的なメインルームです。その空間は一言で言えば徹底的に心地よく、親密さをも感じさせる空間でした。

それは不思議なことでした。というのも、構成する一つ一つの要素は、これまでどこでも見たことのない、かなり独特なものばかりだったからです。

スタジオルームと名付けられた部屋の屋根は、外から見ると芝の築山となっています。それに伴って部屋側の天井もドーム型になっています。

弧を描く天井面の先端は高く持ち上げられ、大きなガラス面が中庭に面します。そのガラス面上方に突き刺さる見晴台には、階段もはしごもなく、そこに至る術は用意されていません。そしてなぜか斜めに細い柱が刺さっています。 等々。。

いくつかの要素はかなり不思議で、どうしてそのような形状なのか論理的に理解することはできません。
しかしその大胆さやある種のユーモアのようなものは、非常に豊かで饒舌で、そして魅力的でした。

それらは徹底的な検証を経て選ばれた形状であり、素材であり、寸法であるのだ、ということは体感として理解することができました。
建築を学ぶか学ばないかの初期にそのような体験をしたことは、とても幸運なことだったと思います。

その時から30年ほどの時が経ちました。

ある種の知性とユーモア、サービス精神。そして親密さ。

…それらが豊かに備わった建築のあり方として、ネクサスのコールハース棟は今も私の中で重要な存在であり続けています。

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

都留理子

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